
新しいレンタル事業を始める際、多くの起業家が直面するのが「資金調達」の壁です。
自己資金だけで全てをまかなうのは難しく、投資家や金融機関からの融資が不可欠となります。
その成否を大きく左右するのが、事業の魅力と将来性を伝える「事業計画書」です。
特にレンタル事業は、初期の在庫投資やシステムの構築、継続的なメンテナンスなど、特有の資金需要があります。
投資家は、単なる思いつきのアイデアではなく、「事業として継続的に利益を生み出せるか」を厳しく見ています。
本記事では、投資家がレンタル事業の事業計画書で特に注目する評価ポイントを、具体的な項目に沿って解説します。
【最重要】投資家が最初に注目する「エグゼクティブサマリー」
事業計画書の中でも、投資家が最初に目を通し、続きを読むかどうかを判断する最も重要な部分が「エグゼクティブサマリー(事業概要)」です。
ここでのポイント
- 事業の全体像を1ページで伝える:どのような市場で、誰に、何を、どのように提供し、どうやって収益を上げるのかを簡潔にまとめます。
- 事業の魅力を凝縮する:市場の将来性、自社の強み、収益モデルの優位性など、最もアピールしたい点を明確に記述します。
- 必要な資金額と使途を明記する:いくらの資金調達を希望し、その資金を何に使うのかを具体的に示します。
この部分で投資家の興味を引くことができなければ、詳細なページを読んでもらうことは難しくなります。時間をかけて練り上げましょう。
投資を判断する3つの柱!評価されるポイントとは?
投資家は主に「市場の魅力」「事業の独自性」「収益性」の3つの柱から、事業の将来性を評価します。
それぞれの項目で、どのような点がチェックされるのかを見ていきましょう。
1. 市場の魅力と将来性
「その事業は、そもそも儲かる市場にあるのか?」という視点です。
個人の思い込みではなく、客観的なデータを用いて市場の魅力を伝える必要があります。
市場規模と成長性の提示
参入しようとしているレンタル市場の規模はどれくらいか、そして今後どのように成長していく見込みがあるのかを、信頼できる調査データやレポートを基に示します。
例えば、特定のアウトドア用品レンタルであれば、国内のアウトドア市場全体の動向などを示すと説得力が増します。
市場調査のデータを探す際は、e-Stat(政府統計の総合窓口)や業界団体の発表などを参考にすると良いでしょう。
ターゲット顧客の明確化
「誰が」「どのような課題やニーズを持っていて」そのサービスを利用するのかを具体的に定義します。年齢、性別、ライフスタイル、価値観といったペルソナを詳細に設定することで、マーケティング戦略の具体性も増します。
競合分析と差別化戦略
市場に存在する競合サービスを徹底的に分析し、自社のサービスがどのように優れているのか(差別化ポイント)を明確に説明します。
価格、品質、品揃え、利便性、独自サービスなど、競合にはない価値をアピールすることが重要です。
2. 事業の独自性とビジネスモデル
「どうやって儲けるのか?」という事業の心臓部です。
レンタル事業特有のポイントを押さえる必要があります。
具体的なレンタルサービス内容
取り扱う商品のラインナップや、サービスの提供フロー(予約→貸出→返却)を具体的に示します。
オンラインで完結するのか、店舗も構えるのかといった事業形態も明確にしましょう。
明確な料金設定と収益モデル
1日あたりのレンタル料、サブスクリプションモデル、従量課金など、どのような料金体系で収益を上げるのかを詳しく説明します。
なぜその価格設定にしたのか、その根拠(原価、競合価格、提供価値)も重要です。
レンタル事業の収益性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→レンタルビジネスの資金調達!金融機関へのアピールポイントを解説
3. 計画の実現可能性と収益性
「その計画は、本当に実現できるのか?そして、いつ黒字になるのか?」という、投資家が最も気にする部分です。
具体的なマーケティング・販売戦略
設定したターゲット顧客に、どのようにしてサービスの存在を知ってもらい、利用してもらうのか、具体的な計画を示します。
Web広告、SNS運用、インフルエンサー活用、提携戦略など、予算に基づいた実行可能なプランが必要です。
信頼できる収益計画
売上予測、原価計算、販管費などを詳細に算出し、損益計算書(P/L)の計画を作成します。
特に以下の点が重要です。
- 売上予測の根拠:客単価 × 顧客数 × 利用頻度など、具体的な数値を基に算出します。希望的観測ではなく、現実的な「最低ライン」と「目標ライン」の複数パターンがあると理想的です。
- 原価の明確化:レンタル商品の仕入れ費用、減価償却費、メンテナンス費用などを正確に把握します。
- 損益分岐点:いつの時点で事業が黒字化するのかを明確に示します。
外部リンク:事業計画書のテンプレートや作成支援ツールは、日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードページでも提供されています。創業時に役立つ「創業計画書」のテンプレートなどもこちらから入手可能です。
体制とチームの強み
「誰がやるのか」も重要な評価ポイントです。代表者や主要メンバーの経歴や専門性、この事業にかける情熱をアピールすることで、計画の実現可能性に対する信頼性が高まります。
【レンタル事業特有】見落とせないリスク管理計画
投資家はリターンだけでなく、リスクにも敏感です。特にレンタル事業では、以下の点に関する対策が不可欠です。
| リスク項目 | 対策のポイント |
|---|---|
| 在庫管理とメンテナンス | 商品の稼働率をどう管理・最大化するか。定期的なメンテナンス計画や、修理・交換のフローを明確にする。 |
| 商品の破損・紛失・盗難 | レンタル規約での取り決め、保証金制度、保険への加入など、具体的なリスクヘッジ策を示す。 |
| 需要の変動 | 季節やトレンドによって需要が変動する場合の対策(商品の入れ替え、キャンペーンの実施など)を計画に含める。 |
これらのリスクを事前に想定し、具体的な対策を事業計画書に盛り込むことで、事業主の管理能力の高さと計画の堅実性を示すことができます。
まとめ:情熱と客観的データを両立させた事業計画書を
投資家の心を動かす事業計画書とは、「この事業を成功させたい」という起業家の情熱と、「成功できる」と納得させる客観的なデータやロジックが両立したものです。
今回ご紹介したポイントを押さえ、あなたのレンタル事業の魅力を最大限に伝えてください。
- 市場の魅力:なぜ今、この市場なのか?
- 事業の独自性:なぜ競合ではなく、自社が選ばれるのか?
- 計画の実現可能性:どうやって収益を上げ、事業を成長させるのか?
- リスク管理:起こりうる問題にどう備えるのか?
これらの問いに明確に答えることが、資金調達への道を切り拓く鍵となります。
レンタル事業の立ち上げや運営の効率化には、予約管理や在庫管理を一元化できるシステムの導入が不可欠です。
この記事の監修者
