バーコード・QRコードを活用したレンタル品の個体管理徹底ガイド

レンタル事業を運営していて、もっとも頭を悩ませるのは「同じ商品」の管理ではないでしょうか。

ECサイトのシステム上では「在庫あり:5個」と表示されていても、現場にあるカメラやPCは、一つひとつ「購入時期」も違えば「傷の有無」も異なります。しかし、通常のネットショップ機能だけでは、「どのシリアル番号の個体を、どのお客様に貸したか」までは追跡できません。

今回は、以前ご紹介したRFID(ICタグ)による高度な管理よりも、さらに導入ハードルが低く、低コストで始められる「バーコード・QRコード」と「管理台帳」を活用した個体管理について解説します。

目次

    なぜ「SKU(商品種別)」だけでは管理できないのか?

    一般的な物販(売り切り)であれば、JANコード(SKU)で「商品Aが売れた」ことさえ分かれば十分です。しかし、レンタル商品は何度も往復する「資産」であるため、以下のリスク管理が必須となります。

    1. 「すり替え」被害の防止

    特に高額な機材やブランド品で発生しやすいのが、「正常品を借りて、見た目が同じジャンク品(故障品)や模倣品を返却する」というすり替え被害です。
    出荷時に「個体識別番号(シリアル)」を記録していないと、返却された商品が本当に貸し出したものと同一か証明できず、泣き寝入りすることになります。

    2. メンテナンスと寿命の管理

    「このドローンは過去に3回修理している」「このドレスは貸出回数が50回を超えた」といった履歴は、商品の寿命予測や品質維持に不可欠です。
    個体ごとに管理していなければ、故障トラブルが起きた際に「いつ、誰が使った時にダメージが生じたか」を特定することもできません。

    【前提】バーコード運用のカギは「外部台帳」にあり

    具体的な運用フローに入る前に、最も重要な準備について触れます。
    バーコードやQRコードはあくまで「商品を識別するための名札」に過ぎません。その名札を使って呼び出す「個体の詳細データ(台帳)」がなければ、管理は機能しません。

    Shopifyやレンタルアプリは一般的に「予約と注文(数量)」を管理するシステムであり、「個別のシリアル番号ごとの状態」を管理するデータベースではありません。そのため、以下のような「個体管理台帳(マスターデータ)」をGoogleスプレッドシートやExcelなどで別途作成することがスタートラインとなります。

    個体管理台帳に必要な項目例

    • 管理ID(バーコードにする番号。例:CAM-001)
    • 商品名(例:Canon EOS R5)
    • メーカーシリアルNo.(本体記載の製造番号)
    • 購入日・仕入元
    • 現在の状態(稼働可/修理中/廃棄など)
    • メンテナンス履歴(修理日、クリーニング実施日など)

    この「台帳」があって初めて、現場でバーコードをスキャンした際に「これは2年前に購入した個体で、先月修理から戻ってきたものだ」という正確な状態把握が可能になります。

    「バーコード/QR」vs「RFID」:手軽なのはどっち?

    個体管理の代表的な手法である「バーコード/QRコード」と「RFID」を比較してみましょう。

    比較項目バーコード・QRコードRFID(ICタグ)
    導入コスト(市販プリンタで作成可)(専用タグ・リーダー必須)
    読み取り作業1点ずつスキャン(視認が必要)箱ごとの一括読み取りが可能
    情報の拡張性QRならスマホカメラでも読取可データの書き換えが可能
    向いているケース中小規模・スモールスタート大規模倉庫・大量在庫

    RFIDは「箱を開けずに一括検品」できる強力なメリットがありますが、導入コストが高額になりがちです。まずは、外部台帳と連携させたシンプルなバーコード/QRコード管理から始めるのが、コストパフォーマンスの良い選択と言えます。

    Shopify × レンタルGO × 台帳での管理フロー

    まず、今回の仕組みの中核となる「レンタルGO」について簡単に解説します。
    レンタルGOは、Shopifyストアに「カレンダー予約機能」を追加するアプリです。通常、Shopify標準の機能では難しい「期間(貸出日〜返却日)を指定した在庫管理」を自動化し、重複予約(ダブルブッキング)を防ぐ役割を担います。

    このレンタルGOの予約機能に、Shopifyの顧客管理と外部台帳を組み合わせることで、以下のような漏れのない管理フローが完成します。

    • 予約管理(レンタルGO)
      「いつ、何個空いているか」を管理します。レンタルプラン商品のShopify在庫追跡は自動的にOFFになり、アプリ側がカレンダーに基づいて予約枠を制御します。
    • 個体管理(台帳+現場運用)
      「どの個体を出荷し、どんな状態か」を管理します。ここをスプレッドシート等の台帳で行います。

    Step 1:商品へのコード貼付と台帳登録

    商品に管理ID(例:A-001)を印字したバーコードシールを貼ります。同時に、スプレッドシートの「管理ID」列にA-001を入力し、その商品のメーカーシリアルや購入日を紐付けます。

    Step 2:予約受付(レンタルGO)

    お客様がWebサイトから予約を行います。レンタルGOが在庫枠を確保しますが、まだ「どの個体を送るか」は決まっていません。

    Step 3:出荷時の紐付け記録

    ここが運用の要です。

    1. 注文リスト(ピッキングリスト)を見て、倉庫から商品をピックアップします。
    2. 梱包直前に、ハンディスキャナーで商品のバーコードを読み取ります。
    3. 読み取った番号を、Shopify注文管理画面の「メモ欄」またはレンタルGOアプリ内の「補足メモ」に記録します。

    これにより、注文情報の中に「送った個体ID」が残ります。レンタルGOの「補足メモ」に入力しておけば、後から予約情報とセットで確認しやすく便利です。
    ※必要に応じて、スプレッドシート側のステータスも「貸出中」に変更します。

    Step 4:返却時の照合とメンテナンス

    商品が返却されたら、再びバーコードをスキャンします。

    1. すり替えチェック:注文時のメモ(Step 3で記録したID)と、手元の商品のIDが一致するか確認します。
    2. 状態チェック:外観や動作を確認し、問題があればスプレッドシート(台帳)の備考欄に記録します(例:「レンズに小傷あり 2024/12/10返却分」など)。

    QRコードのメリット:
    バーコードではなく「QRコード」を採用する最大のメリットは、専用のスキャナー機器がなくても「スマホやタブレットのカメラ」で読み取れる点です。
    小規模な倉庫や、PCがない場所で確認作業を行う場合に便利です。

    店舗受取(店頭レンタル)での活用

    レンタルGOの上位プラン機能である「店舗受取」を利用する場合でも、基本的な考え方は同じです。

    レンタルGOはShopify POSアプリには直接対応していませんが、店頭のPCやタブレットのブラウザを使用することで、スムーズな受け渡しが可能です。

    1. お客様が来店されたら、管理画面で注文を検索。
    2. お渡しする商品のバーコードをスキャンし、「補足メモ」等に記録。
    3. その場で実物確認を行い、引き渡す。

    ※在庫管理の注意点
    「店舗受取」と「配送レンタル」を併用する場合、システム上の在庫(SKU)は分けて登録・管理する必要があります。それぞれの商品に正しいバーコードを貼り、台帳上でも「店頭用」「配送用」の区分けをしておくと混乱を防げます。

    まとめ:ツールを使い分けて資産を守ろう

    レンタル事業の管理は、3つのツールの役割分担がカギとなります。

    • Shopify:顧客・決済の管理
    • レンタルGO:期間予約・在庫枠の管理
    • スプレッドシート(台帳):個体の詳細・履歴の管理

    これらを「バーコード」で繋ぐことで、低コストかつ精度の高い管理体制が実現します。「商品は戻ってきたけれど、どれが誰のか分からない」という状態を防ぐために、まずは台帳作成とラベリングから始めてみましょう。

    大規模事業者様へ:外部台帳が不要になる「個品管理機能」について

    ここまで「外部台帳(スプレッドシート)」との併用を前提に解説してきましたが、在庫数が数千点を超える場合など、外部ツールとの二重管理が負担になるケースもあります。

    レンタルGOの最上位プランである「ENTERPRISE」プランでは、ご相談に応じて「個品管理機能」を追加料金でのオプション開発として承ることが可能です。

    この機能を実装すると、レンタルGOのアプリ内で「個別のシリアル管理」まで完結できるようになり、外部台帳を用意する必要がなくなります。大規模な運用効率化をご検討の際は、ぜひ一度お問い合わせください。

    具体的なアプリの設定や、ECサイトの構築については、ぜひレンタルGOまでご相談ください。

    レンタルGOの導入相談・詳細はこちら

    この記事の監修者

    株式会社ミライガタリ代表取締役 上岡裕
    多数のレンタル事業者のサポートを行い、業界に特化した豊富な実績を持つ。自身が代表を務める株式会社ミライガタリにてレンタル事業EC構築サービス『レンタルGO』を提供中。
    ECサイト構築、予約アプリ/マッチングアプリ等のプロダクト開発を手がける中、商工会議所等の相談員講師としても活動し、多くの事業者のマーケティング支援、DX化による経営改善等を行う。
    都城工業高等専門学校卒。1児の父。