ダイナミックプライシングはレンタルに有効?導入のメリットと事例研究

ホテルや航空券の予約サイトを見ていると、同じ部屋や座席でも日によって価格が大きく異なることに気づきませんか?これは「ダイナミックプライシング(変動料金制)」と呼ばれる仕組みです。

「うちは大企業じゃないから関係ない」と思っていませんか?実は、在庫数に限りがあるレンタル事業こそ、この価格戦略を取り入れることで収益を劇的に改善できる可能性があります。

この記事では、ダイナミックプライシングの基礎知識から、レンタル事業におけるメリット・デメリット、そしてShopifyと「レンタルGO」を活用した現実的な導入方法について解説します。

目次

    ダイナミックプライシングとは?仕組みと基本概念

    ダイナミックプライシングとは、商品やサービスの価格を固定せず、需要と供給の状況に合わせて柔軟に変動させる価格戦略のことです。

    一般的に、需要が高まる時期(繁忙期)には価格を上げ、需要が落ち込む時期(閑散期)には価格を下げることで、売上の最大化を図ります。

    • 繁忙期(ハイシーズン):価格を高く設定し、利益率を高める。
    • 閑散期(オフシーズン):価格を安く設定し、稼働率(利用率)を高める。

    AI(人工知能)を使ってリアルタイムに自動変動させる高度なシステムもありますが、季節や曜日ごとに手動で価格設定を変えるルールベースの手法も立派なダイナミックプライシングの一種です。

    レンタル事業にダイナミックプライシングを導入する3つのメリット

    商品を「売り切って終わり」ではなく、時間を区切って貸し出すレンタルビジネスは、ホテルや航空業界と同様に在庫(資産)の稼働率が収益のカギを握ります。そのため、変動料金制とは非常に相性が良いと言えます。

    1. 繁忙期の収益を最大化できる

    ゴールデンウィークや夏休み、イベントシーズンなど、申し込みが殺到して「在庫切れ」が発生する時期はありませんか?

    需要が供給を上回っている状態で価格を据え置くのは、本来得られたはずの利益を逃している(機会損失)ことになります。需要が高い時期に価格を適正に引き上げることで、在庫数はそのままで売上を大きく伸ばすことが可能です。

    2. 閑散期の在庫稼働率を向上させる

    逆に、平日やオフシーズンに商品が倉庫で眠っている状態は、保管コストだけがかかる「負債」の状態です。

    「平日限定プラン」や「オフシーズン割引」として価格を下げることで、価格に敏感な層を取り込み、在庫を稼働させることができます。少しでも収益を生むことで、キャッシュフローの改善につながります。

    3. 需要の平準化(ピークシフト)

    価格差をつけることで、どうしてもその日程でなければならない顧客以外を、価格の安い日程へ誘導することができます。
    これにより、特定の日に注文が集中してオペレーションがパンクするのを防ぎ、スタッフの業務負担を平準化する効果も期待できます。

    ポイント
    レンタル事業の収益構造については、以下の記事でも詳しく解説しています。
    【経営者必見】レンタル事業で「儲からない」と言われる本当の理由と失敗する企業の特徴

    導入前に知っておくべきデメリットとリスク

    メリットの多い施策ですが、導入には注意点もあります。

    顧客の不信感を招くリスク

    「昨日見たときは5,000円だったのに、今日見たら8,000円になっていた」という状況は、説明が不足していると「足元を見られている」と顧客に不信感を与えかねません。

    「なぜ価格が違うのか(ハイシーズン料金であることなど)」をサイト上で明確に伝え、透明性を確保することが重要です。

    価格管理の手間が増える

    頻繁に価格を変える運用は、管理コストの増大を招きます。特に商品数が多い場合、すべての商品の価格を毎日手動で変えるのは現実的ではありません。

    Shopify×レンタルGOで実現する「現実的な」価格戦略

    AIによる全自動の価格変動システムは導入コストが高額になりがちです。しかし、Shopifyとレンタルアプリ「レンタルGO」を組み合わせることで、中小規模の事業者でも無理なく「変動料金的な運用」を取り入れることができます。

    ここでは、システム改修を行わずにすぐに実践できる2つのアプローチをご紹介します。

    アプローチ1:シーズンごとに「設定」または「商品」を切り替える

    Shopifyの基本機能とレンタルGOの設定を組み合わせることで、シーズンごとの価格変更に対応できます。運用スタイルに合わせて以下の2つのパターンから選びましょう。

    パターンA:既存のレンタルプランを「編集」する

    「4月から夏料金に一斉切り替えする」といったように、通常期と繁忙期の予約受付期間を明確に区切る(同時掲載しない)場合は、現在使用しているプラン自体を編集するのが最も効率的です。

    • 方法:シーズン切り替えのタイミングで、商品に紐づいている「レンタルプラン」の設定画面を開き、価格等を直接編集して保存する。
    • メリット:紐づいているすべての商品価格が一括で変更されるため、1商品ずつ設定を変える手間がありません。
    • 注意点:プランを更新するとShopify上のバリエーションが再生成されるため、SKUコードやバーコードなどの情報はリセット(空欄)になります。変更後は必ず再入力等のメンテナンスが必要です。

    パターンB:シーズン別に商品を分けて登録する

    「現在は冬だが、夏休みの予約も並行して受け付けたい」というように、異なる価格帯の商品を同時に掲載したい場合は、商品を分けて登録する方法が有効です。

    • 方法:「商品A(通常プラン)」と「商品A(ハイシーズン用)」を別商品として作成し、それぞれに異なる価格設定のレンタルプランを紐づける。
    • メリット:顧客が未来の予約を柔軟に選べる。通常プランの商品情報はそのまま残るため、SKU再入力の手間がない。
    • 注意点:システム上は「別の商品」となるため、在庫は連動しません。ダブルブッキングを防ぐために、在庫数の割り振りや調整が必要です。

    アプローチ2:クーポン機能を活用した実質的な変動

    商品価格自体はいじらず、Shopifyの「ディスカウント(クーポン)機能」を活用して価格差を作る方法です。

    • 基本価格:ハイシーズン基準の高めの価格に設定
    • 平日・閑散期:「平日限定20%OFFクーポン」を発行

    この方法なら、商品ページやプランを増やすことなく、手軽に価格の強弱をつけることができます。顧客にとっても「安くなっている」というお得感が伝わりやすく、閑散期の利用促進に効果的です。

    上位プランの機能を活用したLTV向上策

    価格変動だけでなく、顧客単価を上げるための施策として「そのまま購入」機能の導入も検討してみましょう。
    レンタルして気に入った商品をその場で購入できるオプションを提供することで、レンタルの売上だけでなく、物販による追加収益も期待できます。

    ※「そのまま購入」機能を利用するには、レンタルGOの上位プランでの設定が必要です。

    まとめ:スモールスタートで価格戦略を試そう

    ダイナミックプライシングは、必ずしもAIを使った高度なシステムである必要はありません。「週末は少し高くする」「平日はクーポンで安くする」といった工夫も立派な価格戦略です。

    ShopifyとレンタルGOの柔軟な機能を活用すれば、高額なツールを導入しなくても、今日から収益最大化への一歩を踏み出すことができます。まずは特定の商品や期間に絞って、テスト的に導入してみてはいかがでしょうか。

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    この記事の監修者

    株式会社ミライガタリ代表取締役 上岡裕
    多数のレンタル事業者のサポートを行い、業界に特化した豊富な実績を持つ。自身が代表を務める株式会社ミライガタリにてレンタル事業EC構築サービス『レンタルGO』を提供中。
    ECサイト構築、予約アプリ/マッチングアプリ等のプロダクト開発を手がける中、商工会議所等の相談員講師としても活動し、多くの事業者のマーケティング支援、DX化による経営改善等を行う。
    都城工業高等専門学校卒。1児の父。