アクセス解析の基本|Googleアナリティクスで見るべきレンタルECの重要指標

レンタルECにおけるアクセス解析の重要性

ECサイト運営において、アクセス解析は「店舗の健康診断」です。しかし、商品を販売して終わりの「売り切り型EC」と、商品が返却されて再び貸し出される「レンタルEC」とでは、見るべき指標(KPI)が大きく異なります。

レンタルECにおいて、単に「PV数(ページビュー)」や「購入数」だけを追っていると、ビジネスの本質的な課題を見落とす可能性があります。なぜなら、レンタル事業は在庫の回転(稼働率)とリピート率こそが利益に直結するからです。

本記事では、Googleアナリティクス(GA4)やShopifyの分析機能を活用し、レンタルEC事業者が必ずチェックすべき重要指標と、その分析手法について解説します。

目次

    通常のECとレンタルECの指標の違い

    一般的な物販ECとレンタルECでは、利益が生み出される構造が異なります。まずはその違いを理解し、追うべき数字を明確にしましょう。

    比較項目一般的なEC(物販)レンタルEC
    収益ポイント購入時(1回)利用期間 × 回数(循環)
    最重要KPI例購入数、客単価稼働率、LTV、回転数
    在庫の動き売れると減る(無くなる)戻ってくれば復活する(循環する)

    在庫を「資産」として捉える視点

    通常のECでは在庫がなくなれば「完売」ですが、レンタルECでは在庫が手元に戻れば再び売上を生む「資産」となります。

    そのため、単純な「在庫の残り個数」を見るのではなく、「カレンダー(スケジュール)がどれくらい埋まっているか」を分析することが重要になります。

    在庫が利益を生まない「不良在庫」になるリスクについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
    参考記事:【経営者必見】レンタル事業で「儲からない」と言われる本当の理由と失敗する企業の特徴

    Googleアナリティクス(GA4)で見るべき基本指標

    現在、標準的なアクセス解析ツールとして利用されているGoogleアナリティクス 4(GA4)を活用して、レンタルEC特有の動きをどう追うべきかを紹介します。

    まだGA4を導入していない方は、Google公式のガイドを参考に設定を行ってください。
    参考:[GA4] アナリティクスで新しいウェブサイトまたはアプリのセットアップを行う – Google アナリティクス ヘルプ

    1. コンバージョン率(CVR)と「販売」の区別

    レンタルECでは、レンタル予約だけでなく、付属品や消耗品の「通常販売」を併売しているケースも多くあります。

    GA4の標準レポートでは、レンタルの予約も物品の購入も、すべて同じ「購入(Purchase)」イベントとしてカウントされます。そのため、全体の購入数だけを見ていると「レンタル予約が増えた」のか「消耗品が売れた」のか判別がつきません。

    分析を行う際は、以下の点に注意しましょう。

    • 商品カテゴリで分ける: GA4の分析画面でitem_category(商品カテゴリ)等のフィルタを使い、「レンタル商品」と「販売商品」を切り分けて数値を追う必要があります。

    特にレンタル商品においては、希望の日程がすでに埋まっていることによる離脱が頻繁に発生します。そのため、CVRだけでなく「空き状況」と「予約数」のバランスを見ることが重要です。

    2. エンゲージメント時間(滞在時間)

    レンタル商品は、購入品に比べてスペックや注意事項(返却方法や補償内容など)をじっくり読む傾向にあります。エンゲージメント時間が極端に短いページは、ユーザーが必要な情報を見つけられていない可能性があります。

    レンタルEC成功の鍵を握る3つの独自指標

    Googleアナリティクスの基本数値に加え、レンタル事業特有の指標を組み合わせて分析することで、より深い改善策が見えてきます。

    ① 稼働率(Utilization Rate)

    保有している在庫のうち、実際に貸し出されている商品の割合です。これがレンタルビジネスにおいて最も重要な指標の一つです。

    簡易計算式: (貸出中の日数 ÷ 全在庫の稼働可能日数) × 100

    一般的なECの在庫管理画面では「在庫数」しか見えませんが、レンタル事業では「期間ごとの注文数(貸出回数)」を抽出し、自社で保有している「実在庫数」と照らし合わせることで、実質的な稼働率を算出しましょう。

    ② LTV(顧客生涯価値)

    1人の顧客が、生涯でどれだけの利益をもたらしてくれるかという指標です。カメラ、ベビー用品、イベント用品などは、1回あたりの単価よりも「何回利用してくれるか」が重要です。

    リピート利用を促す施策として、LINE公式アカウントの活用などが有効です。
    参考記事:LINE公式アカウントでリピート予約を促進するステップ配信シナリオ

    ③ 損益分岐点までの回転数

    その商品を「何回レンタルすれば仕入れ値を回収できるか」という指標です。アクセス解析と販売データを紐づけ、「よく見られているが、回転数が低い商品」があれば、レンタル期間の設定や価格の見直しが必要です。

    Shopifyでの分析環境の整え方

    レンタルサイトをShopifyで構築している場合、Shopifyの標準レポート機能も非常に強力です。Googleアナリティクスと併用することで、より正確な分析が可能になります。

    Shopifyでの構築手順や基本設定については、以下の完全ガイドも併せてご覧ください。
    参考記事:【完全ガイド】レンタルECサイトの始め方|Shopify, ecforce…プラットフォーム徹底比較

    売上レポートの活用

    Shopify標準の「商品ごとの売上レポート」を活用しましょう。どの商品が、どの時期に頻繁に予約されているかを確認し、繁忙期に備えて実在庫を追加するなどの判断材料にします。

    集客チャネルの分析

    ユーザーがどこから来たのか(SNS、検索、広告)を知ることは重要です。例えば、Instagram経由のユーザーは「ビジュアル重視」の商品をレンタルしやすい傾向があります。

    「レンタルGO」で実現する高度なデータ活用

    レンタルECの分析において最大の課題は、「GoogleアナリティクスやShopify標準機能だけでは、カレンダーの空き状況による機会損失が見えにくい」という点です。

    Shopifyアプリ「レンタルGO」を導入することで、以下のメリットが生まれます。

    • リアルタイム在庫カレンダー: 商品ページで直感的に空き状況(カレンダー)を確認できるため、無駄な問い合わせによる離脱を防ぎます。
    • 柔軟な期間設定とデータ連携: 注文データとしてレンタル期間が記録されるため、Shopifyの売上レポートを活用して、時期ごとの需要予測が立てやすくなります。
    • CVRの改善: 視覚的に分かりやすいカレンダー予約機能を提供することで、予約手続きの迷いを減らし、結果としてコンバージョン率の向上が期待できます。

    まとめ:数字に基づいて「貸し出し」を最適化しよう

    レンタルECのアクセス解析は、単に「集客数」を追うだけでは不十分です。「在庫が効率よく回っているか(稼働率)」と「ユーザーが満足してリピートしているか(LTV)」を常に意識する必要があります。

    チェックリスト:

    • GA4で「通常販売」と「レンタル予約」を区別して計測できているか?
    • 注文数と実在庫数を照らし合わせ、「稼働率」を把握できているか?
    • 予約時の空き状況確認はスムーズか?

    データに基づいた改善を繰り返し、収益性の高いレンタルECサイトを構築しましょう。
    Shopifyでレンタル事業を始めるなら、在庫管理と予約機能に特化した「レンタルGO」が強力にサポートします。

    レンタルGOの詳細を見る

    この記事の監修者

    株式会社ミライガタリ代表取締役 上岡裕
    多数のレンタル事業者のECサイト構築を手がけ、業界に特化した豊富な実績を持つ。EC構築、アプリ構築の知見を土台に商工会議所等の相談員講師として活動し、多くの事業者のサポートを行う。事業のDX化による経営改善が得意領域。
    レンタル事業の社会的、経営的強さに魅せられEC構築サービス『レンタルGO』発案、開発。自身が代用を務める株式会社ミライガタリにてサービスを提供中。
    都城工業高等専門学校卒。1児の父。