円安・物価高はレンタル事業に吉か凶か?経営への影響と対策

円安・物価高はレンタル事業に吉か凶か?経営への影響と対策

記録的な円安と、それに伴う物価高騰の波が、国内の多くの産業に影響を与えています。

レンタル事業もその例外ではありません。

海外からの仕入れコストは増加し、利益を圧迫する一方、視点を変えれば新たなビジネスチャンスが生まれているのも事実です。

本記事では、円安・物価高がレンタル事業に与える「凶」と「吉」の両側面を分析し、この厳しい経済状況を乗り越え、むしろ成長の糧とするための具体的な対策を解説します。

目次

    円安・物価高がもたらすレンタル事業への「凶」:3つの課題

    まず、レンタル事業者が直面している厳しい現実、つまり「凶」の側面から見ていきましょう。

    主な課題は以下の3つです。

    1. 仕入れ・維持コストの高騰

    レンタル事業の根幹をなす商品。
    その多くを海外からの輸入品に頼っている場合、円安は仕入れ価格の直接的な上昇を意味します。

    カメラ、PC、ブランドバッグ、アウトドア用品など、人気のあるレンタル商材ほど、その影響は大きいでしょう。

    また、ガソリン価格の上昇は、商品の配送費や、レンタカー事業における燃料費といった運営コスト全体を押し上げます。

    ベンチャーサポートの調査によれば、経営者の3割が円安・物価上昇によるコスト高騰で利益が減少したと回答しており、これは多くのレンタル事業者にとっても他人事ではありません。

    2. 利益率の圧迫と価格転嫁の難しさ

    仕入れコストが上昇すれば、当然、利益率は圧迫されます。

    しかし、競合他社との価格競争が激しい市場において、コスト増加分をそのままレンタル料金に転嫁するのは容易ではありません。

    特に、節約志向が高まる国内市場では、安易な値上げは顧客離れを引き起こすリスクをはらんでいます。

    3. 国内需要の冷え込み懸念

    物価高は、個人の可処分所得を減少させ、消費マインドを冷え込ませる可能性があります。

    「わざわざレンタルするよりも、手持ちの物で済ませよう」「レジャーの回数を減らそう」といった消費者の節約志向は、レンタル需要の減少に直結しかねません。

    円安・物価高がもたらすレンタル事業への「吉」:3つの好機

    一方で、この経済状況はレンタル事業者にとって大きなチャンス、つまり「吉」の側面も持っています。

    1. インバウンド需要の爆発的増加

    円安は、外国人観光客にとって「日本での旅行が格安になる」ことを意味します。

    政府観光局(JNTO)の発表によると、訪日外客数は回復傾向にあり、今後ますますの増加が見込まれます。

    彼らにとって、滞在中に必要なものを手軽に利用できるレンタルサービスは非常に魅力的です。

    • 旅行用品:スーツケース、モバイルWi-Fi、カメラ
    • レジャー用品:スキー・スノーボード用品、自転車、キャンプ用品
    • 移動手段:レンタカー

    これらの需要を取り込むことで、国内需要の落ち込みをカバーし、新たな収益の柱を築くことが可能です。

    2. 「所有から利用へ」価値観の加速

    物価高により、高額な商品を購入することへのハードルは以前よりも高まっています。

    「必要な時に、必要な期間だけ、低コストで利用したい」というニーズは、レンタルビジネスの基本理念と完全に合致しており、追い風と言えるでしょう。

    これは、BtoCだけでなく、オフィス機器などを扱うBtoBのレンタル市場においても同様の傾向が見られます。

    あわせて読みたい:BtoB(法人向け)レンタル市場のポテンシャルと攻略法

    3. 中古・リユース市場の活性化

    新品の価格が高騰する中で、状態の良い中古品(リユース品)への注目が高まっています。

    これは、レンタル商品の仕入れにおいて、コストを抑える絶好の機会です。

    中古品を安価で仕入れ、適切にメンテナンスを施してレンタル提供することで、高い利益率を確保しやすくなります。

    【経営者必見】円安・物価高を乗り切るための5つの対策

    では、この「凶」を乗りこなし、「吉」を最大限に活かすためには、具体的にどのような手を打つべきなのでしょうか。

    1. 仕入れ戦略の見直し

    • 中古・リユース品の活用:新品だけでなく、質の良い中古品の仕入れルートを積極的に開拓しましょう。古物商許可の取得も視野に入れる価値があります。
    • 国内製品への切り替え:可能な範囲で、為替変動の影響を受けにくい国内メーカーの製品に切り替えることも有効な手段です。
    • 仕入れ先との価格交渉:原材料の高騰といった具体的なデータを示し、価格交渉を行うことも重要です。

    2. インバウンド需要への対応強化

    • 多言語対応:ウェブサイトや予約システム、問い合わせ窓口を英語、中国語、韓国語など多言語に対応させましょう。
    • キャッシュレス決済の導入:海外で一般的なクレジットカードやQRコード決済を導入し、決済の利便性を高めます。
    • 外国人向けの情報発信:SNSや海外の旅行サイトを活用し、日本の観光情報と絡めて自社のレンタルサービスを積極的にアピールします。

    3. 運営コストの徹底的な削減

    • 業務のデジタル化:予約管理や顧客管理にシステムを導入することで、人的コストを削減し、業務効率を大幅に向上させることができます。
    • エネルギーコストの見直し:電力会社のプラン見直しや、省エネ性能の高い機器への切り替えも検討しましょう。
    • 保険料の見直し:事業内容に合わせて、保険プランが最適化されているか定期的に確認し、無駄なコストを削減します。

    4. 付加価値の提供による単価アップ

    単なる価格競争から脱却し、顧客単価を上げる工夫も必要です。

    • アップセル・クロスセル:より高機能な上位モデルを提案(アップセル)したり、関連商品をセットでレンタルしてもらう(クロスセル)戦略です。
    • 安心保障プラン:破損や汚損に備えた保険・保障プランを有料で提供し、顧客満足度と収益を同時に高めます。
    • 専門スタッフによるサポート:商品の使い方や、おすすめの利用シーンなどを専門スタッフがアドバイスすることで、他社との差別化を図ります。

    5. 戦略的な価格設定

    コスト増を吸収しきれない場合は、値上げも検討せざるを得ません。
    その際は、顧客の理解を得られるような丁寧な説明が不可欠です。

    • 需要に応じた価格変動制(ダイナミック・プライシング):繫忙期と閑散期で料金に差をつけることで、収益の最大化を図ります。
    • セット割引の導入:複数の商品をまとめてレンタルすることで、お得感を演出し、顧客単価を上げます。

    あわせて読みたい:レンタル事業のメリット!安定した利益のための経営戦略

    まとめ

    円安・物価高は、レンタル事業者にとって、仕入れコストの増加という大きな「凶」をもたらします。しかし、それは同時に、インバウンド需要の獲得や、「所有から利用へ」という消費スタイルの変化を加速させる「吉」の側面も持っています。

    重要なのは、この変化を正確に捉え、脅威を最小限に抑えつつ、チャンスを最大限に活かすための戦略を迅速に実行することです。

    仕入れの見直し、インバウンド対応、コスト削減、そして付加価値の提供。

    これらの対策を総合的に講じることで、現在の厳しい経済状況を乗り越え、事業をさらなる成長軌道に乗せることが可能になるでしょう。

    この記事の監修者

    株式会社ミライガタリ代表取締役 上岡裕
    多数のレンタル事業者のECサイト構築を手がけ、業界に特化した豊富な実績を持つ。EC構築、アプリ構築の知見を土台に商工会議所等の相談員講師として活動し、多くの事業者のサポートを行う。事業のDX化による経営改善が得意領域。
    レンタル事業の社会的、経営的強さに魅せられEC構築サービス『レンタルGO』発案、開発。自身が代用を務める株式会社ミライガタリにてサービスを提供中。
    都城工業高等専門学校卒。1児の父。