
多店舗展開やフランチャイズ(FC)化は、ビジネスの規模を拡大するための強力な選択肢です。しかし、単に店舗を増やすだけでは競合との差別化が難しく、加盟店の収益確保に苦戦するケースも少なくありません。
そこで有効なのが、既存の物販に「レンタル(期間貸し)」を組み込み、来店頻度と収益性を高める戦略です。
本記事では、FC展開における本部サポートのあり方と、Shopifyアプリ「レンタルGO」を活用したシステム構築術について解説します。特に、Shopifyのプラン仕様に関わる「ストア構成の選択」は、後戻りできない重要な経営判断となるため、詳しく見ていきましょう。
FC展開における「本部サポート」とは
フランチャイズビジネスにおいて、本部(フランチャイザー)には加盟店(フランチャイジー)を成功に導く義務があります。特に重要なのが、「加盟店が差別化できる武器(商材・システム)」の提供です。
「レンタル」を導入することで、高額商品の購入ハードルを下げたり、休眠在庫を収益化したりといったメリットが生まれますが、これを実現するには「本部と加盟店の在庫・売上をどう管理するか」というシステム課題をクリアする必要があります。
参考情報:
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)では、フランチャイズ・システムの健全な発展のためのガイドラインを公開しています。
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)公式サイト
【経営判断】「1ストア集約」か「店舗別ストア」か
ShopifyでFC展開を行う場合、まず直面するのが「ストアをどう分けるか」という問題です。これはコストと管理体制に直結します。
パターンA:1ストア集約型(ロケーション管理)
本部が管理する1つのShopifyストアの中に、複数の加盟店を「ロケーション(拠点)」として登録する方法です。
- メリット:ドメインが統一されSEOに強い。アプリ費用が1店舗分で済む(低コスト)。
- デメリット:売上が一度本部の口座に入るため、分配計算が必要。ロケーション数の上限がある。
注意:Shopifyプランによる「ロケーション数」の壁
Shopifyの通常プラン(Basic, Standard, Advanced)では、登録できるロケーション数に上限(通常10カ所まで)があります。
つまり、加盟店が10店舗を超える場合、最上位の「Shopify Plus」プランへのアップグレードが必要になります。小規模なFC展開であれば通常プランでカバーできますが、拡大を見据える場合はこの制限を考慮する必要があります。
パターンB:店舗別ストア型(独立採算)
加盟店ごとに別々のShopifyストアを作成する方法です。
- メリット:売上が各加盟店に直接入る。店舗数の上限がない。
- デメリット:ドメインが分散する。Shopify月額利用料とアプリ利用料(レンタルGOなど)が店舗数分かかる。
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【在庫管理】POS非対応環境での運用ルール
ストア構成が決まったら、次は具体的な在庫管理のルールを定めます。
ここで重要なのが、「レンタルGO」はPOSアプリ(ハードウェア連携)に非対応であり、すべての取引が「オンライン在庫」として処理されるという点です。
鉄則:商品名に【店舗名】を入れて区別する
POSのように「A店のレジを通したからA店の在庫が減る」という自動判定は行われません。そのため、特に「パターンA(1ストア集約型)」を採用する場合、在庫の混同を防ぐために物理的に商品ページを分ける運用が必須です。
推奨されるネーミングルール
お客様やスタッフが誤って他店舗の在庫を予約しないよう、以下のように商品名・プラン名を設定します。
- 商品名:【渋谷店専用】一眼レフカメラ X100
- 商品名:【新宿店専用】一眼レフカメラ X100
このように商品ページ(SKU)自体を分けて登録することで、カレンダーの在庫枠が店舗ごとに独立し、ダブルブッキングを確実に防ぐことができます。
【現場運用】即日対応か、メンテナンス重視か
本部としては、加盟店の負担や商材の特性に合わせて、アプリの設定値を調整するガイドラインも必要です。
スピード重視なら「準備期間0日」
アウトドア用品や日用品など、返却後すぐに貸出可能な商材の場合、管理画面の「配送準備期間」を「0日」に設定します。
これにより、店頭に来たお客様に対してその場で(iPad等のブラウザから)予約操作を行い、即日レンタルすることが可能になります。
品質重視なら「準備期間を設定」
ドレスや精密機器など、返却後のメンテナンス(検品・清掃)が必須の商材では、即日貸出はリスクになります。
この場合、あえて「配送準備期間」を「1日〜3日」程度に設定します。この期間はカレンダーが自動的にブロックされるため、これを「メンテナンス期間(インターバル)」として活用することで、スタッフが焦ることなく品質管理を行えます。
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加盟店の収益を最大化する機能
最後に、システム導入コスト以上の価値を加盟店に提供するための機能を紹介します。
「そのまま購入」で在庫リスクを低減
レンタル品の回転率が落ちてきた場合、加盟店にとっては「不良在庫」になりかねません。
上位プランで利用可能な「そのまま購入(Rent to Own)」機能を導入すれば、レンタル後のお客様に「差額を払って買取」という選択肢を提示できます。これにより、加盟店は在庫を現金化しやすくなり、廃棄ロスの削減にもつながります。
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運用上のリスク管理について
システムを運用する上で、本部が全加盟店に周知しておくべき仕様上の注意点です。
在庫確保のタイミング
Shopifyおよびアプリの仕様上、在庫が確保されるのはカレンダーの日付を選択した時ではなく、「注文完了(決済完了)時」となります。
人気商品へのアクセスが集中した場合など、稀に決済までのタイムラグで在庫状況が変動する可能性があるため、現場では「注文完了画面が出るまでは予約確定ではない」という認識を共有しておくと安心です。
まとめ:プラン制限と運用ルールを把握したFC構築を
レンタル事業のFC展開は大きなチャンスですが、Shopifyのプラン仕様と「レンタルGO」の特性を理解しないまま進めると、後からシステム変更を余儀なくされます。
- 10店舗を超える展開なら「Shopify Plus」か「複数ストア」を検討する
- POS非対応のため、商品は「店舗名」を入れてページを分ける
- 商材に合わせて「準備期間(メンテナンス期間)」を適切に設定する
これらのポイントを押さえ、拡張性のある強固なFCネットワークを構築してください。
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