
「初期投資を抑えられる」「シェアリングエコノミー市場が伸びている」といった理由から、レンタル事業への参入を検討する経営者の方が増えています。
しかし、その一方で「レンタル事業は儲からない」という声も少なくありません。
結論から言うと、レンタル事業は決して儲からないビジネスではありません。
しかし、成功するためには、このビジネスモデル特有の課題と失敗のパターンを深く理解しておく必要があります。
この記事では、レンタル事業が「儲からない」と言われる本当の理由、失敗する企業に共通する特徴、そして事業を成功に導くための具体的なポイントを徹底解説します。
これから参入を考えている方、すでに事業を始めているが収益に伸び悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
レンタル事業が「儲からない」と言われる5つの本当の理由
なぜ、レンタル事業は「儲からない」と言われてしまうのでしょうか。
その背景には、他のビジネスモデルとは異なる5つの大きな理由が存在します。
理由1:商品の在庫管理と保管コスト
レンタル事業の生命線は「商品」そのものです。しかし、この商品在庫が経営を圧迫する最大の要因になり得ます。
- 過剰在庫:需要を読み間違えて商品を仕入れすぎると、稼働しない在庫の保管コスト(倉庫代)や減価償却費が利益を圧迫します。
- 在庫不足:人気商品の在庫が足りないと、レンタル希望のお客様を逃してしまい、大きな機会損失に繋がります。
需要予測の精度が低く、適切な在庫量を維持できないと、収益化は極めて困難になります。
理由2:メンテナンス・修理コストの発生
商品はレンタルされるたびに劣化し、時には破損して返却されます。常に最適な状態で商品を提供するためには、メンテナンスが不可欠です。
- クリーニング・清掃費用
- 消耗品の交換費用
- 破損時の修理費用
- メンテナンスを行う人件費
これらのコストをレンタル料金に適切に転嫁できないと、貸し出せば出すほど赤字になるという事態に陥りかねません。
理由3:集客・マーケティングの難易度
「良い商品を揃えればお客様は集まる」という考えは通用しません。特にウェブサイトやアプリを主戦場とする場合、専門的なマーケティング戦略が必須です。
多くの企業が、SEO対策(検索エンジン最適化)やWeb広告、SNS運用などの専門知識がないまま参入し、誰にも知られることなく集客に失敗しています。競合サービスとの差別化を図り、ターゲット顧客に的確にアプローチするマーケティング力がなければ、安定した収益は見込めません。
理由4:シビアな価格設定
レンタル事業の価格設定は非常にデリケートです。
- 価格が高すぎる場合: 「購入した方が安い」と判断され、顧客が離れてしまう。
- 価格が安すぎる場合: 貸出数は増えても、メンテナンスコストや人件費を吸収できず、利益が残らない。
商品の原価、減価償却、メンテナンスコスト、競合の価格、市場の需要など、多くの要素を考慮して、利益を確保できる絶妙な価格ラインを見つける必要があります。
理由5:予期せぬトラブルのリスク
商品を外部に貸し出すという性質上、様々なトラブルは避けられません。
- 商品の破損・汚損
- 商品の紛失・盗難
- 返却遅延
- 利用者による不正利用
これらのトラブルは、商品の損失だけでなく、対応にかかる人件費や次の利用者への機会損失など、目に見えないコストも発生させます。事前の利用規約の整備や、保険・補償制度の導入といったリスク管理が不十分だと、一つのトラブルが大きな損失に繋がります。
商品の破損対策や補償については
こちらの記事「レンタル品の破損や紛失、盗難時の対策や補償」をご覧ください。
【要注意】レンタル事業で失敗する企業・経営者の3つの共通点
「儲からない」理由を理解した上で、次は失敗する企業に共通する特徴を見ていきましょう。もし自社に当てはまる点があれば、早急な改善が必要です。
1. 市場調査と事業計画が甘い
「この商品なら貸し出せば儲かるはずだ」といった思い込みだけで事業を始めてしまうケースです。
誰に(ターゲット)、何を(商品)、いくらで(価格)、どのように(提供方法)届けるのかという基本的な戦略が練られていません。
- 競合サービスの価格やサービス内容を把握していない。
- ターゲット顧客の本当のニーズを理解していない。
- 収支計画がどんぶり勘定で、コスト計算が不十分。
このような状態で参入しても、成功する確率は低いでしょう。参考として、経済産業省が発表しているシェアリングエコノミーに関する市場調査などの公的データを参考に、入念な計画を立てることが重要です。
2. 在庫管理・業務オペレーションが非効率
事業の根幹である在庫管理や日々の業務が、アナログな手作業に頼りきっている企業も失敗しがちです。Excelや手書きの台帳での管理には限界があります。
- 予約のダブルブッキングが頻発する。
- 商品の現在の状態(貸出中、メンテナンス中など)を即座に把握できない。
- 発送や返却の処理に時間がかかりすぎている。
非効率なオペレーションは、人件費を増大させるだけでなく、顧客満足度の低下に直結します。
3. 顧客満足度(CX)を軽視している
「商品を貸すだけ」のビジネスだと考えている企業は、リピーターを獲得できずに衰退していきます。
- ウェブサイトやアプリが使いにくい。
- 問い合わせへの返信が遅い、または対応が悪い。
- 返却された商品が汚れたまま次の人に貸し出される。
利用者のレビューや意見に耳を傾けず、サービス改善を怠れば、顧客はより良い体験を提供してくれる競合へすぐに乗り換えてしまいます。
リピーター獲得の重要性については
こちらの記事「顧客を”ファン化”せよ!レンタルビジネスで利益を握るリピーター獲得戦略」をご覧ください。
「儲からない」から脱却!レンタル事業を成功に導く5つのポイント
では、どうすれば「儲からない」レンタル事業から脱却できるのでしょうか。成功している企業が実践している5つのポイントをご紹介します。
1. 特定の分野に特化する(ニッチ戦略)
大手と同じように多種多様な商品を扱うのではなく、特定の分野に特化することで専門性と独自性を打ち出しましょう。
▼特化戦略の例
- 特定の趣味: 天体望遠鏡、高級オーディオ、ドローンなど
- 特定のイベント: キャンプ用品、ベビー用品(お宮参り)、パーティー衣装など
- 特定の課題解決: 単身赴任者向け家電、在宅ワーク向けオフィスチェアなど
ターゲットを絞ることで、より深い顧客ニーズに応えることができ、価格競争からも脱却しやすくなります。
2. ITシステム導入で業務を徹底的に効率化する
在庫管理や予約管理の課題は、ITシステムの導入で解決できます。初期投資はかかりますが、長期的に見れば人件費の削減と顧客満足度の向上に繋がり、費用対効果は絶大です。
- 予約管理システム: 24時間365日、自動で予約受付。ダブルブッキングを防止。
- 在庫管理システム: 商品の所在や状態をリアルタイムで可視化。
- 顧客管理システム(CRM): 利用履歴を分析し、リピート促進の施策に繋げる。
近年では、STORES 予約やSquare 予約など、スモールビジネスでも導入しやすいクラウド型の予約システムも増えています。
私たちのレンタル事業用EC構築サービス「レンタルGO」も近年お問い合わせが増えているサービスです、これからITの力でレンタル業務を効率化させたいとお考えの事業者さまはご検討&お問合せくださいませ。
3. サブスクリプションモデルを検討する
単発のレンタルだけでなく、月額制で「借り放題」や「定期的な商品交換」を提供するサブスクリプションモデルは、収益の安定化に大きく貢献します。
▼サブスクリプションのメリット
- 安定した収益: 毎月決まった収益が見込めるため、経営が安定する。
- 顧客の囲い込み: 顧客との継続的な関係を築き、LTV(顧客生涯価値)を高められる。
- 需要予測の精度向上: 会員数から将来の需要がある程度予測できる。
サブスクリプションのメリットについては
こちらの記事「利益の安定化!サブスクリプション型レンタルの可能性」をご覧ください。
4. 魅力的な顧客体験(CX)を設計する
商品をレンタルするプロセス全体を「楽しい体験」にすることが、リピーター獲得の鍵です。
- 簡単な予約・返却: スマホで数タップで完結するシンプルな手続き。
- 丁寧な梱包: 商品が届いた時にワクワクするような綺麗な梱包。
- 手厚いサポート: 使い方ガイドの同封や、迅速で丁寧なカスタマーサポート。
感動的な顧客体験は、SNSでの口コミにも繋がり、新たな顧客を呼び込む好循環を生み出します。
5. 利用規約と補償制度を整備する
破損や紛失といった不測の事態に備え、リスク管理体制を万全にしましょう。
- 明確な利用規約の作成: キャンセルポリシー、延滞料金、破損時の責任範囲などを明記する。
- 補償プランの導入: 利用者が任意で加入できる安心補償プランを用意する。
- 損害保険への加入: 高額商品を扱う場合は、企業として損害保険に加入しておく。
弁護士などの専門家に相談し、自社のビジネスモデルに合った規約を作成することが重要です。
これにより、利用者との無用なトラブルを防ぎ、安心してサービスを利用してもらえる環境を整えることができます。
まとめ:正しい知識と戦略でレンタル事業は「儲かる」ビジネスになる
レンタル事業が「儲からない」と言われる背景には、在庫管理、メンテナンス、集客、価格設定、トラブル対応といった、このビジネス特有の課題が存在します。
そして、これらの課題に対して無策な企業が、失敗の道をたどってしまうのです。
しかし、裏を返せば、これらの課題を一つひとつ戦略的にクリアすることで、レンタル事業は非常に大きな可能性を秘めた「儲かる」ビジネスになり得ます。
- ニッチな市場で独自のポジションを築く
- ITシステムを活用して業務を効率化する
- 顧客との長期的な関係を構築する
- 徹底したリスク管理を行う
シェアリングエコノミーという追い風が吹く今こそ、正しい知識と戦略をもって、レンタル事業の成功を目指してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者