「また借りたい」を生む顧客体験(CX)とは?リピート率を向上させるCRM活用術

「また借りたい」を生む顧客体験(CX)とは?リピート率を向上させるCRM活用術

レンタルサービスやサブスクリプションビジネスにおいて、新規顧客の獲得コストは年々上昇しています。

このような市場環境で持続的に成長するためには、一度利用していただいたお客様にいかに「また借りたい」と感じていただき、リピーターになってもらうかが極めて重要です。

その鍵を握るのが、顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)の向上に他なりません。

この記事では、顧客体験(CX)の基本的な考え方から、リピート率を劇的に向上させるための具体的なCRM活用術まで、成功事例を交えながら分かりやすく解説します。

目次

    そもそも顧客体験(CX)とは?

    CXとCS(顧客満足度)の決定的な違い

    CXと混同されがちな言葉に「CS(顧客満足度)」があります。

    両者は密接に関連しますが、その視点と範囲に大きな違いがあります。

    • CS(顧客満足度):商品やサービスの機能、価格、スタッフの対応など、特定の接点における「満足度」を測る指標。
    • CX(顧客体験):商品を認知してから、購入、利用、アフターサポート、そして再利用に至るまでの、顧客とのすべての接点における「感情的な価値」や「体験全体」を指す概念。

    例えば、「レンタル品の品質には満足(CSが高い)したが、予約サイトが使いにくく、返却手続きも面倒だった」という場合、総合的な顧客体験(CX)は低いと評価されます。

    CSが点の評価であるのに対し、CXは顧客との関わり全体を線で捉えるアプローチなのです。

    なぜ今、CXの向上がリピート率に直結するのか

    モノやサービスが溢れる現代において、品質や価格だけで他社と差別化を図ることは困難です。

    顧客は単に「モノを借りる」という行為だけでなく、そのプロセス全体を通して得られる快適さや感動といった「体験」を重視するようになりました。

    優れたCXは顧客の心に深く残り、「次もここで借りたい」というポジティブな感情(顧客ロイヤルティ)を育みます。

    この顧客ロイヤルティこそが、安定したリピート利用と、企業の長期的な収益基盤となるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化に繋がるのです。

    LTVの重要性については、総務省の調査でも、人口減少社会における企業の持続的成長の鍵として指摘されています。

    あわせて読みたい:Z世代の消費行動を徹底分析!次世代顧客を掴むレンタルサービスとは?

    リピート率を向上させるCX向上の3ステップ

    優れたCXは、決して偶然生まれるものではありません。顧客を深く理解し、戦略的に設計することで実現可能です。
    ここでは、CXを向上させるための基本的な3つのステップをご紹介します。

    Step1: 顧客の現状を正しく把握する

    まずは、顧客が自社のサービスとどのように関わっているのか、現状をデータに基づいて正確に把握することから始めます。

    アンケートやインタビュー、Webサイトのアクセス解析、購買データなどを活用し、顧客の声や行動を可視化しましょう。

    • 定性データ:顧客アンケート、レビュー、問い合わせ内容 など
    • 定量データ:利用頻度、レンタル履歴、Webサイトの閲覧ページ、解約率 など

    Step2: 理想の顧客体験を設計する

    次に、収集したデータをもとに、顧客の行動や感情の起伏を時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」を作成します。

    これにより、顧客がどの段階で不満やストレスを感じているのか(ペインポイント)、あるいは喜びを感じているのか(ピークポイント)が明確になります。

    このマップ上で見つかった課題を解決し、感動体験を創出するための具体的な施策を設計していくことが、理想のCXへの第一歩です。

    Step3: 施策を実行し、効果を測定する(PDCA)

    設計した施策を実行に移し、その効果を測定します。

    NPS®(ネット・プロモーター・スコア)などの指標を用いてCXの変化を定期的に観測し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回していくことが重要です。

    一度きりの施策で終わらせず、継続的に顧客体験の質を高めていく姿勢が求められます。

    顧客体験を飛躍させるCRM活用術

    前述のCX向上ステップを効率的かつ効果的に実行するために、CRM(顧客関係管理)システムの活用は不可欠です。

    CRMは、散在しがちな顧客情報を一元管理し、一人ひとりに最適化されたアプローチを実現します。

    顧客情報の一元管理とセグメンテーション

    CRMの最も基本的な機能は、顧客の属性情報(年齢、性別など)や利用履歴、問い合わせ履歴といったあらゆるデータを一つに集約することです。

    これにより、顧客を深く理解するための土台ができます。

    さらに、蓄積されたデータをもとに、

    「直近3ヶ月以内にカメラをレンタルした20代の顧客」
    「キャンプ用品を年に3回以上レンタルする優良顧客」

    といったように、特定の条件で顧客をグループ分け(セグメンテーション)することが可能です。

    パーソナライズされたコミュニケーションの実現

    セグメンテーションされた顧客リストに対して、一人ひとりの興味やニーズに合わせた情報発信を行うことで、顧客との絆を深めることができます。

    施策例内容
    バースデークーポン誕生月に特別な割引クーポンをメールで送付する。
    レコメンドメール過去にレンタルした商品と関連性の高い新着商品を案内する。
    返却後のフォロー商品を返却した数日後に、利用のお礼と商品の使い心地を尋ねるメールを送る。

    このような「自分のことを理解してくれている」と感じさせるコミュニケーションが、顧客のロイヤルティを高め、次の利用へと繋がります。

    効率的な顧客管理や在庫管理は、スムーズなレンタル体験の基盤となります。

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    まとめ:継続的な改善が「選ばれ続ける」理由になる

    「また借りたい」を生む顧客体験(CX)は、一度の施策で完成するものではありません。

    顧客を深く理解し、データに基づいて仮説を立て、CRMのようなツールを活用しながら継続的に改善を続けることで、初めて実現します。

    顧客一人ひとりとの関係を大切に育むことが、激しい市場競争を勝ち抜き、お客様から永続的に選ばれ続けるための最も確実な道筋と言えるでしょう。

    レンタル事業の成功には、優れた顧客体験の構築が不可欠です。事業の将来性や成功のポイントについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

    この記事の監修者

    株式会社ミライガタリ代表取締役 上岡裕
    多数のレンタル事業者のECサイト構築を手がけ、業界に特化した豊富な実績を持つ。EC構築、アプリ構築の知見を土台に商工会議所等の相談員講師として活動し、多くの事業者のサポートを行う。事業のDX化による経営改善が得意領域。
    レンタル事業の社会的、経営的強さに魅せられEC構築サービス『レンタルGO』発案、開発。自身が代用を務める株式会社ミライガタリにてサービスを提供中。
    都城工業高等専門学校卒。1児の父。