貸倒損失を最小限に抑えるための債権回収プロセスと法的措置

レンタル事業を運営する中で、最も避けたいトラブルの一つが「貸した商品が返ってこない」「利用料金が支払われない」という事態です。

これらのトラブルは、単に売上が減るだけでなく、大切な資産である商品を失うことにもなりかねません。このような「貸倒損失」を最小限に抑えるためには、感情的にならず、淡々と法的なプロセスを踏んで回収を行う知識が必要です。

この記事では、レンタル事業における債権回収の具体的なプロセスと、トラブルを未然に防ぐための対策について解説します。

目次

    そもそも「貸倒損失」とは?レンタル事業への影響

    貸倒(かしだおれ)とは、取引先や顧客の倒産、支払い拒否、行方不明などの理由により、売掛金や貸付金が回収できなくなることを指します。この回収不能となった損失を「貸倒損失」と呼びます。

    一般的な物販(小売)であれば、商品代金の未回収が主な損害ですが、レンタル事業の場合はより深刻です。

    • 資産の喪失:商品そのもの(固定資産)が返却されないため、将来生み出すはずだった利益も失います。
    • 代替品の調達コスト:次の予約が入っている場合、急いで代替品を用意するための追加コストが発生します。

    このように、レンタル事業における貸倒は経営に二重、三重のダメージを与えるため、迅速かつ毅然とした対応が求められます。

    段階別・債権回収の具体的なプロセス

    万が一、返却遅延や未払いが発生した場合、どのような手順で回収を進めるべきでしょうか。ここでは一般的な債権回収のフローを解説します。

    ※注:本記事は一般的な手続きの流れを解説するものであり、個別の案件については弁護士や司法書士等の専門家へご相談ください。

    1. 電話・メール・書面での催告

    まずは、電話やメール、SNSのDM(ダイレクトメッセージ)など、連絡がつきやすい手段で速やかに状況を確認します。「うっかり忘れていた」というケースも多いため、最初は丁寧な口調で返却や支払いを促しましょう。

    それでも反応がない場合は、普通郵便で請求書や催告書を送付します。この段階では、相手に「支払う意思があるか」を確認し、記録を残しておくことが重要です。

    2. 内容証明郵便の送付

    再三の連絡にも応じない場合、あるいは連絡が取れなくなった場合は、「内容証明郵便」を送付します。

    内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスです。これ自体に強制執行力はありませんが、以下の効果が期待できます。

    • 相手への心理的プレッシャー:「本気で法的措置をとる準備がある」という強い意思表示になります。
    • 証拠としての効力:将来的に裁判になった際、正式に請求を行った証拠として活用できます。

    3. 法的措置(支払督促・少額訴訟)

    内容証明郵便を送っても解決しない場合は、裁判所を通した手続きを検討します。比較的低コストで利用できる制度として、以下の2つがあります。

    手続き名特徴
    支払督促書類審査のみで完結する簡易的な手続きです。相手方が異議を申し立てなければ、判決と同じ効力(強制執行の権利)を得られます。
    少額訴訟60万円以下の金銭支払いを求める場合に利用できる特別な裁判手続きです。原則として1回の審理で判決が出ます。

    これらの法的措置を行うことで、最終的には預金口座や給与の差し押さえといった「強制執行」が可能になります。

    トラブルを未然に防ぐための予防策

    債権回収は時間と精神的な労力を要します。最も重要なのは、回収騒ぎになる前にリスクを回避することです。

    本人確認(KYC)の徹底

    高額な商品を貸し出す場合は、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の提出を必須にしましょう。住所や氏名が架空のものであれば、回収はほぼ不可能です。

    利用規約(契約書)の整備

    「延滞料金の規定」や「商品破損時の賠償責任」を利用規約に明確に記載し、同意を得ておくことが不可欠です。規約が曖昧だと、いざという時に請求の根拠が弱くなってしまいます。

    詳しくは、以下の記事で法律や契約書のポイントを解説しています。

    レンタル業界の法律・規制を総まとめ|古物営業法から契約書の注意点まで

    事前決済の導入

    「後払い」や「現地払い」は未回収リスクを高めます。予約完了時にクレジットカード等で決済を完了させる「事前決済」を原則とすることで、料金のとりっぱぐれを防ぐことができます。

    レンタルGOを活用したリスク管理と対策

    リスクをゼロにすることは難しいですが、適切なシステムを導入することで、管理コストを下げつつリスクを大幅に低減することは可能です。

    Shopifyアプリ「レンタルGO」を活用すれば、以下のようなリスク対策を業務フローに組み込むことができます。

    1. 不正注文の検知と顧客管理

    レンタルGOはShopifyのプラットフォーム上で動作するため、Shopifyが標準で備えている強力なセキュリティ機能の恩恵を受けられます。過去に不正があったクレジットカード情報の検知や、問題のある顧客をブラックリスト化して注文を制限するなどの管理が可能です。

    2. 利用規約への同意フローの自動化

    注文画面において、利用規約への同意チェックを必須にすることができます。これにより、「規約を見ていない」という言い逃れを防ぎ、法的な正当性を担保しやすくなります。

    3. 「そのまま購入」でトラブルを売上に変える

    上位プランで利用可能な「そのまま購入」機能は、お客様がレンタル中の商品を気に入った場合に、差額を支払って購入できる機能です。

    これは顧客満足度を上げる機能ですが、リスク対策の側面もあります。「返却するのが面倒」「気に入って手放したくない」と感じている顧客に対し、無断延滞される前に「購入」という正規のルートを提示することで、トラブルを「販売」というポジティブな結果に着地させることができます。

    キャッシュフローを改善せよ!レンタル事業特有のお金の流れと管理のポイント

    まとめ

    レンタル事業において、貸倒リスクは避けて通れない課題です。しかし、本人確認や事前決済などの予防策を徹底し、万が一の際は内容証明や法的措置といったプロセスを淡々と進めることで、被害を最小限に食い止めることができます。

    システムで防げるリスクはシステムに任せ、安心して事業を拡大していきましょう。

    レンタルGOは、事前決済による確実な代金回収や、利用規約の同意取得など、安全なレンタル運用をサポートする機能を備えています。

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    この記事の監修者

    株式会社ミライガタリ代表取締役 上岡裕
    多数のレンタル事業者のサポートを行い、業界に特化した豊富な実績を持つ。自身が代表を務める株式会社ミライガタリにてレンタル事業EC構築サービス『レンタルGO』を提供中。
    ECサイト構築、予約アプリ/マッチングアプリ等のプロダクト開発を手がける中、商工会議所等の相談員講師としても活動し、多くの事業者のマーケティング支援、DX化による経営改善等を行う。
    都城工業高等専門学校卒。1児の父。